『沖縄芸能のダイナミズム』から「序にかえて」を無料公開!

2020年4月刊行の『沖縄芸能のダイナミズム』から編者による「序にかえて」をPDFで公開いたします。

三島わかな「序にかえて」

本書収録の各論考の簡潔な紹介と本書の特徴がまとめられています。

沖縄芸能のダイナミズム──創造・表象・越境

久万田晋・三島わかな 編

2020年4月15日

定価 2,800円+税

沖縄芸能のダイナミズム──創造・表象・越境

沖縄芸能のダイナミズム 創造・表象・越境

久万田晋・三島わかな 編

定価:本体2,800円+税

2020年4月15日刊
四六判並製 / 384頁
ISBN:978-4-909544-07-0


喜怒哀楽が歌になり踊りになる
琉球の島々で育まれた「民俗芸能」、王朝で生まれた「宮廷芸能」、近代メディアによって広まった「大衆芸能」など、多彩でゆたかな沖縄芸能の数々。移民と共に海を渡った踊りや、電波にのって日本全国に届けられた歌など、芸能は沖縄内にとどまることなく、現代に至るまで、時空をこえてさまざまな展開を見せている。伝統と変容の間でゆらぎ、時代の変化に翻弄され、それでも人々のアイデンティティであり続けた沖縄芸能の300年を、さまざまなトピックから描き出す。


目次
序にかえて/三島わかな→公開中

Ⅰ 舞台芸能のいま・むかし──規範と多様性

第1章 八重山の祝宴に関する一考察──祭儀と饗宴/飯田泰彦
コラム① 鳩間の港の物語──加治工勇の音楽活動/飯田泰彦

第2章 近世における組踊をめぐって──上演作品・舞台・小道具、そして近代への伝承/鈴木耕太
コラム② 新作組踊の作者──大城立裕と進化する組踊/鈴木耕太

Ⅱ 表象のゆくえ──継承と創造

第3章 伝統芸能の〈担い手〉とは誰か──現代から問い直す組踊の継承/呉屋淳子
コラム③ 「マースケーイ歌」の旅──長浜眞勇の伝統へのまなざし/呉屋淳子

第4章 地域の音文化は電波に乗って──戦前のラジオ番組にみる沖縄イメージ/三島わかな
コラム④ 戦後沖縄放送の黎明──川平朝清の情熱/三島わかな

Ⅲ 越境する想い──伝播と移動

第5章 エイサー伝播の現代的状況──沖縄本島北部・中部・南部の事例から/久万田晋
コラム⑤ 「琉球國祭り太鼓」の躍進──目取真武男と創作エイサー/久万田晋

第6章 ふるさとへの希求──ハワイ沖縄系移民と芸能/遠藤美奈
コラム⑥ ふるさとへ帰ってきた芸能──仲宗根文通・宮里松と与儀エイサー/遠藤美奈

第7章 三線に積み重なる価値と人間関係──大阪の事例から/栗山新也
コラム⑦ 伝統を建て直す──仲嶺幹と三線業界改革/三島わかな

音楽・映像資料紹介
あとがき/久万田晋


編者
久万田晋(くまだ・すすむ)

沖縄県立芸術大学附属研究所教授。民族音楽学、民俗芸能論。
『沖縄の民俗芸能論──神祭り、臼太鼓からエイサーまでー』(ボーダーインク、2011年)、『日本民謡大観 沖縄奄美 奄美諸島編』(共著、日本放送出版協会、1993年)

三島わかな(みしま・わかな)
沖縄県立芸術大学附属研究所共同研究員、同大学音楽学部講師。音楽学、洋楽受容史。
『近代沖縄の洋楽受容──伝統・創作・アイデンティティ』(森話社、2014年)、『文化としての日本のうた』(共著、東洋館出版社、2016年)

書評・紹介

ほんのうらがわ(編者による刊行エッセイ)

歴史という「物語」/吉成直樹

歴史という「物語」

吉成直樹(『琉球王国は誰がつくったのか──倭寇と交易の時代』著者)

新たに刊行した『琉球王国は誰がつくったのか──倭寇と交易の時代』は、従来の古琉球史研究に対する批判であるとともに、その批判を踏まえて自分なりに古琉球史像を描くとすれば、どのようになるのかという試みである。
古琉球史研究に対する批判とは、古琉球時代の琉球国を過大に評価することによって生じる研究のゆがみ、またそれによって史資料の扱い方にさえ制約を与えてしまうことに対する批判である。言うまでもなく、「古琉球時代の琉球国が栄華を誇ったことはない」などと主張しているのではないことをあらかじめ強調しておきたい。

ひとつだけ例をあげて、本書の紹介としたい。

琉球の三山を統一することになる思紹(ししょう)、尚巴志(しょうはし)が佐敷按司の時代に拠城としていた佐敷上グスクをめぐる問題である。なお、尚巴志が思紹の後を継いで佐敷按司になったのは1392年、21歳の時であったとされる(『中山世譜』)。
琉球文化圏には、城壁で囲まれた大規模な城塞型の大型グスクと、尾根や台地の先端部地域を、堀を入れて本体と切り離して安全を保つ全国の中世城郭にみられる築城法を用いた「グスク」が存在する。佐敷上グスクは後者に位置づけられ、高石垣を伴わず、主に切岸と空堀で造った曲輪を主郭とする、全国の中世城郭様式による山城であるとされる(三木靖『鹿児島県奄美市 史跡赤木名城跡保存管理計画書』奄美市教育委員会、2015年)。
佐敷上グスクは琉球的な城壁を伴うグスクは異なり、本土的な構造を持つ中世城郭であり、系譜の異なる構造物ということになる。こうした佐敷上グスクに類似する構造を持つ中世城郭跡は、奄美大島の赤木名グスク、喜界島の七城のほか、沖縄島北部地域の根謝銘グスク(大宜味村。謝名グスクとも呼ぶ)、名護グスク、親川グスク(名護市)をその代表にあげることができる。このほかにも国頭地方にいくつかの事例がある。
佐敷上グスクは、14世紀後半を中心に16世紀までの年代が与えられているが、14世紀後半以降は沖縄島の各地で造営される琉球的な大型グスクの構造化(基壇建物の建造や大規模城壁の造営など)が進む時期であり、それと同時期に盛んに利用されていたことになる。壮大な城塞型の大型グスクが形成されていく時期に、中世城郭の構造を持つ佐敷上グスクを思紹、尚巴志は拠城としたのである。

こうした中世城郭は、もちろん本土地域から渡来した技術者によって築城されたと考えられ、そこを拠点とする人びとも本土地域から渡来した人びとと考えられる。築城した技術者のみが本土地域の人びとであり、そこに拠っていた人びとは沖縄島社会の人びとであったとは考え難い。中世城郭跡の分布を考えても、琉球国の統一を成し遂げた思紹、尚巴志の出自はもともと本土地域であったと考えられる。
従来の研究では佐敷上グスクのような中世城郭の様式を持つグスクには「土より成るグスク」などの名称が与えられ、琉球的なグスクの前代のものとされ、時間的前後に置き換えられたり、琉球型のグスクのカテゴリーの中に位置づける──この場合は立地の地形や地質などの違いが強調される──ことによって理解されてきた。

なぜ、そのような理解の仕方になるのかを考えると、沖縄島社会の発展は「琉球王国」へと向かう単線的な発展を遂げたとする見方があったと言わざるを得ない。それは、多様な史資料を「琉球王国」にいたる過程に直線的に並べる思考にほかならない。その背景には「琉球王国」を絶対的なものとみなし、すべてはそこにたどり着くという歴史観があったことによる。こうした見方による弊害は、高梨修氏(奄美市立奄美博物館)、池田榮史氏(琉球大学)によって、つとに指摘されてきたことであった。
こうした歴史観に立つと、内的発展論への過度の傾斜、主体性・自立性の強調もまた、歴史描写の際の特徴として現れることになる。こうした特徴は、外部からの影響、ことに外部からの人びとの移住による影響をきわめて低く見積もることにつながる。

このたびの本は、こうした制約から離れるとどのような歴史像を描くことができるか、またそのような歴史観がどのようにして形成されたのかを明らかにしようとした試みである。後者については、前著『琉球王権と太陽の王』を刊行したときに、本欄「ほんのうらがわ」に掲載していただいた「沖縄研究と観光戦略」を発展させたものであり、1975年の沖縄海洋博の沖縄館の展示構想までさかのぼって跡付けたものである。このテーマは、歴史という「物語」が人びとによって、どのように受容され強固に共有されるようになったのかを明らかしようとする試みである言い換えることができる。「物語」とはフィクションを意味するものではないことは言うまでもない。

琉球王国は誰がつくったのか──倭寇と交易の時代

吉成直樹 著

2020年1月27日

定価 3,200円+税

琉球王国は誰がつくったのか──倭寇と交易の時代


試し読み

琉球王国は誰がつくったのか
倭寇と交易の時代

吉成直樹 著

定価:本体3,200円+税

2020年1月27日刊
四六判上製 / 344頁
ISBN:978-4-909544-06-3


首里城の王たちは、いったいどこからきたのか?
首里城は、15世紀初頭、尚巴志にはじまる琉球国の王城だった。
農業を基盤とし沖縄島内部で力を蓄えた豪族が、抗争の末に王国を樹立したというのが通説だが、これは真実だろうか? 政情不安定な東アジアの海では、倭寇をはじめ、まつろわぬ者たちがしのぎを削っていた。王国の成立に彼らが深く関わっていたことを多角的なアプローチから立証し、通説を突き崩す新しい琉球史を編み上げる。


目次
はじめに

第一章 グスク時代開始期から琉球国形成へ──通説の批判的検討
一 グスク時代開始期
二 農耕の開始は農耕社会の成立を意味するか
三 グスク時代初期の交易ネットワーク
四 十三世紀後半以降の中国産陶磁器の受容
五 沖縄島社会の変化と交易の活発化
六 琉球の貿易システムの転換──中国との交易の開始
七 琉球を舞台とする私貿易
八 「三山」の実体と覇権争い
九 倭寇の拠点としての「三山」
十 琉球国の形成

第二章 「琉球王国論」とその内面化──『琉球の時代』とその後
一 「琉球王国論」を読む
二 『琉球の時代』が描く歴史像と特徴
三 『琉球の時代』の意図するもの
四 その後の「琉球王国論」の展開
五 「琉球王国論」の内面化
六 仲松・高良論争──琉球王国は存在したか

結びにかえて→公開中

【補論①】三山の描写の枠組み
【補論②】『おもろさうし』にみる「日本」の位置づけ


引用・参考文献
あとがき
索引→公開中


著者
吉成直樹(よしなり・なおき)

1955年生。秋田市出身。元法政大学教授。理学博士(東京大学)。地理学、民俗学。
『琉球の成立──移住と交易の歴史』(南方新社、2011年)、『琉球王権と太陽の王』(七月社、2018年)、『琉球史を問い直す──古琉球時代論』(共著、森話社、2015年)、『琉球王国と倭寇──おもろの語る歴史』(共著、森話社、2006年)。

書評・紹介

ほんのうらがわ(編者による刊行エッセイ)

『現代語訳 童子百物かたり』から5話分を無料公開!

2019年3月刊行の『現代語訳 童子百物かたり──東北・米沢の怪異譚』から5話分をPDFで公開いたします。

三 墓所の釜場へ杭を打って来ること
四 隅のば様ということ
六 桶屋町𥶡入六左衛門の疝気のこと
八 李山村の多蔵、狐にばかされること
四十三 馬下何某、化け物を見ること

怪異とときに笑いに満ちた『童子百物かたり』の一端をご覧いただけます!

現代語訳 童子百物かたり──東北・米沢の怪異譚

吉田綱富 著 水野道子 訳

2019年3月8日

定価 2,300円+税

『井上靖 未発表初期短篇集』の発売日等について

4月4日に「毎日新聞」で記事にしていただいた『井上靖 未発表初期短篇集』ですが、現在製本中です。

取次店の本が納入されるのが4月9日ですので、その数日後に書店様に配本されます。
ただすべての書店様の店頭に並ぶわけではありませんので、あらかじめ書店様でご注文いただくのが確実です。
こちらのパンフレットに書店様への注文書がついておりますので、お使いいただくとスムーズかと思います。

Amazon他ネット書店では現在予約を受け付けており、4月11日からの発送になる見込みです。

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