近代の記憶 民俗の変容と消滅
定価:本体3,400円+税
日本が失ってしまったもの
高度経済成長がもたらした社会変容によって、日本人の生活と価値観は大きく変わった。
日本人が、それまで守り、また多大な恩恵を受けてきた「民俗」は、衰退・消滅を余儀なくされることになる。
最後の木地師が送った人生、電気がもたらした感動と変化、戦争にまつわる悲しい民俗、山の民俗の象徴ともいえるイロリの消滅など、人びとの記憶に眠るそれらの事象を、褪色と忘却からすくいだし、記録として甦らせる。
高度経済成長期の末期から現在に至るまで、半世紀近く日本を歩き続けた民俗学者が聞き取った、失われた民俗の記憶。
目次
序章 ムラびとの語りを紡ぐ→公開中
Ⅰ 消えゆく民俗の記憶
第一章 木地師の終焉と膳椀の行方
第二章 電灯の点った日
第三章 山のムラ・生業複合の変容
第四章 戦争と連動した民俗
Ⅱ イロリとその民俗の消滅
第五章 イロリのあらまし
第六章 イロリの垂直性
第七章 イロリと信仰
第八章 イロリもろもろ
第九章 イロリ消滅からの思索
追い書き
著者
野本寛一(のもと・かんいち)
1937年、静岡県生まれ。近畿大学名誉教授。専攻は日本民俗学。1959年、國學院大學文学部卒業。1988年、文学博士(筑波大学)。2015年、文化功労者。2017年、瑞宝重光章。
著書に『焼畑民俗文化論』『生態民俗学序説』『海岸環境民俗論』『庶民列伝』『熊野山海民俗考』『野本寛一著作集(Ⅰ~Ⅴ)』『栃と餅』『地霊の復権』『自然災害と民俗』『季節の民俗誌』『民俗誌・女の一生』『神と自然の景観論──信仰環境を読む』『生態と民俗──人と動植物の相渉譜』ほか多数。
書評・紹介
- 2019-02-24「中日新聞」「東京新聞」朝刊
評者:神崎宣武(民俗学者) - 2019-03-17「信濃毎日新聞」朝刊
評者:安岡健一(大阪大学大学院准教授) - 2019-03-23「朝日新聞」朝刊
評者:保阪正康(ノンフィクション作家) - 2019-03-30「図書新聞」
評者:永池健二(奈良教育大学教授) - 2020-01-01「伊勢新聞」朝刊