電話と文学

電話と文学
声のメディアの近代

黒田 翔大 著

定価:本体4,500円+税

2021年10月14日刊
A5判上製 / 224頁
ISBN:978-4-909544-21-6


「声のメディア」を、文学はどのように描いてきたのか。
電話事業が始まる明治期から、「外地」にまで電話網が拡がった戦時期、家庭や街路に電話が遍在するようになる昭和戦後期までを、作品を論じながら通観し、未来・身体・空間などの視座から、「文化としての電話」を浮かび上がらせる。


目次
序章 文学における電話を問題化する
一 電話に関連するメディア研究
二 文学研究における電話
三 本書の構成

第一章 文学における電話前史──遅塚麗水『電話機』に描かれた電話
一 電話交換手の信頼性
二 電話の利用形態
三 電話交換手に対する不満
四 電話利用者の問題性

第二章 「受話器」という比喩──夏目漱石『彼岸過迄』の敬太郎を通して
一 漱石作品における電話の描写
二 「受話器」としての敬太郎
三 千代子の「受話器」
四 聴き手としての敬太郎

第三章 「満洲国」内における電話の一考察──日向伸夫『第八号転轍器』、牛島春子『福寿草』から
一 空間的距離の短縮と言語の差異
二 日向伸夫『第八号転轍器』
三 牛島春子『福寿草』

第四章 占領期における電話空間──安岡章太郎『ガラスの靴』に描かれた破局
一 電話の同時代状況
二 占領期における電話
三 対面と電話の差異
四 「僕」と悦子のコミュニケーション

第五章 「電話の声」と四号電話機の影響──松本清張『声』とその前後の推理小説
一 四号電話機普及以前の推理小説と「電話の声」
二 四号電話機普及以後の推理小説と「電話の声」
三 「電話の声」が注目された事件
四 松本清張『声』における犯行動機

第六章 電話社会のディストピア──星新一『声の網』に描かれた未来社会
一 家庭における電話の普及
二 プッシュホンの登場と電話サービスの多様化
三 電話によるおしゃべり
四 電話の発達した社会
五 コンピュータによる支配

第七章 電話に付与される場所性──中上健次『十九歳の地図』における脅迫電話
一 一九七〇年代の電話の描写
二 公衆電話と家庭用電話
三 電話によるメディア空間
四 地図の作成
五 場所の自覚

結章 「声のメディア」としての電話
一 本書のまとめ
二 今後の展望

参考文献一覧
初出一覧
あとがき
索引→公開中


著者
黒田 翔大(くろだ・しょうだい)

1990年 兵庫県生まれ
2013年 関西学院大学文学部卒業
2015年 名古屋大学大学院博士前期課程修了
2019年 名古屋大学大学院博士後期課程修了、博士(文学)
聖霊高等学校非常勤講師、トライデント外国語・ホテル・ブライダル専門学校非常勤講師、名古屋大学教育学部附属高等学校非常勤講師、名古屋大学大学院博士研究員、中京学院大学非常勤講師、名古屋芸術大学契約助手などを経て、現在は大阪体育大学非常勤講師、大阪人間科学大学非常勤講師。

書評・紹介

ほんのうらがわ(編者による刊行エッセイ)