『近代の記憶』序章「ムラびとの語りを紡ぐ」を無料公開!

2019年1月刊行の『近代の記憶──民俗の変容と消滅』の序章「ムラびとの語りを紡ぐ」をPDFで公開いたします。

民俗学者・野本寛一氏の特徴は、とにかく一次資料(つまり自分が直接聞き取った話)にこだわるところですが、この序章でも「近代」とはどんな時代だったのかを生活の底から考えさせられる、生々しい聞き書きが展開されます。

「夫は苦悶の末、田中山へ行って酸漿(ほおずき)の根を掘って持ち帰り、みつさんにこれを煎じて飲んでくれと呟いた。この地では酸漿の根は「子ハライ」の薬になると言い伝えられていた。「苦かった。あの苦さは忘れません──」とみつさんは語る。」

そしてもう一つ、瞽女(ごぜ/盲目の門付女芸人)についても以下のような聞き書きがあります。

「清太郎さんは「瞽女の唄聞き歩くと嫁なんぞはもらえないからな」──と親たちから瞽女宿へ行くことを禁じられた。普通の人は瞽女宿へは行かなかった、という言葉に対してその説明を求めると、「二二、三歳から三〇代になっても嫁のもらえない小作人の男たちが集まった」「瞽女は一〇銭で言うことを聞くという話を聞いたことがあった」という説明が返ってきた。(中略)もとより宵の口には、瞽女唄や口寄せが行われたのであるが、夜が更けると宿に泊まってゆく男たちがあったのである。」

本書はこの序章をとば口とし、400ページにわたる圧倒的な分量で、民俗と近代の関係を考えていきます。
ぜひご一読ください!

序章「ムラびとの語りを紡ぐ」(PDF/全19ページ)
Amazon.co.jp『近代の記憶』