日本民俗学の萌芽と生成──近世から明治まで


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日本民俗学の萌芽と生成
近世から明治まで

板橋春夫 著

定価:本体5,400円+税

2023年10月20日刊
A5判上製 / 320頁
ISBN:978-4-909544-32-2


日本民俗学はどのようにして生まれたのか
「古風」の発見によって江戸時代に芽生えた民俗的関心は、明治以降の近代化の中で、触発・融合・反発を繰り返し、やがて柳田國男という大河に注ぎ込む。学史の丹念な整理から描き出す、日本民俗学誕生前夜の鳥瞰図。


目次
序論
はじめに
一 日本民俗学生成期における民俗学史の評価
二 日本民俗学確立期における民俗学史の評価
三 日本民俗学発展期における民俗学史の評価
まとめと課題

Ⅰ 近世期における民俗研究の萌芽

第一章 『菅江真澄遊覧記』にみる民俗世界
はじめに
一 菅江真澄の民俗的見聞録
二 菅江真澄の見たナマハゲ
三 夜伽と火焚き習俗
四 アヤツコの民俗
五 疫病の隔離習俗
六 「日本民俗学の開祖」評価の疑問
まとめ

第二章 近世紀行文にみる民俗事象の発見
はじめに
一 貝原益軒「日本民俗学の鼻祖」評価の疑問
二 古川古松軒『東遊雑記』の民俗的視点
三 橘南谿『東西遊記』の旅と古風への視点
まとめ

第三章 野田泉光院『日本九峰修行日記』にみる庶民の暮らし
はじめに
一 宮本常一の紀行文の評価
二 野田泉光院『日本九峰修行日記』
三 記述の特色の諸相
四 居心地の良い農村で長期滞在
五 野田泉光院が見た疱瘡習俗
まとめ

第四章 古風の発見と田舎
はじめに
一 民俗の自覚・古風への着目
二 経験する辺境の記録『寺川郷談』
三 古語と辺境の関係性
まとめ

第五章 探訪と観察の実践
はじめに
一 鈴木牧之『秋山記行』の民俗世界
二 『北越雪譜』にみる雪の民俗
まとめ

第六章 資料収集の実験「諸国風俗問状」
はじめに
一 屋代弘賢のアンケート調査
二 回答者の調査態度
三 「諸国風俗問状」にみる米寿の祝い
四 疫病除けと俗信
五 雛祭りの遊山箱
まとめ

第七章 不思議な現象の記録
はじめに
一 平田篤胤の幽冥界・異人論
二 奇談・雑話を集めた『耳嚢』
三 膨大な随筆集・松浦静山『甲子夜話』
まとめ

Ⅱ 明治期における日本民俗学の生成

第八章 外国人の日本文化研究と人類学会の成立
はじめに
一 外国人による日本文化研究
二 人類学会の創設
三 報道画と民俗画像の『風俗画報』
まとめ

第九章 土俗会の活動と羽柴雄輔・山中共古
はじめに
一 土俗会の活動
二 土俗への関心
三 「物質的具象的な民俗現象」への注目
四 羽柴雄輔の調査報告
五 山中共古の観察記録
まとめ

第十章 柳田國男の民俗学への転進
はじめに
一 民俗学以前の柳田國男
二 農政官僚から民俗学者への転進
三 『後狩詞記』でフィールドを体験
四 『石神問答』で研究手法の模索
五 『遠野物語』の文学性と初期研究テーマ
まとめ

第十一章 南方熊楠のFolklore
はじめに
一 南方熊楠の生涯
二 オコゼが取り持つ南方と柳田の縁
三 南方と柳田の交流と学問志向
四 南方の構想した民俗学
五 「往古通用日の初め」の先見性
六 南方熊楠の民俗学入門
まとめ

第十二章 郷土会と雑誌『郷土研究』の創刊
はじめに
一 新渡戸稲造の地方学と郷土会
二 雑誌『郷土研究』を創刊
三 神話研究の高木敏雄
四 南方熊楠による編集方針批判
五 雑誌『郷土研究』が提示した諸課題
まとめ

第十三章 Folkloreの受容と雑誌『民俗』
はじめに
一 山中共古とイギリスのFolklore
二 柳田國男が愛読した『白き石の上にて』『流刑の神々』『金枝篇』
三 上田敏の俗説学と芳賀矢一のフォークロア
四 石橋臥波と雑誌『民俗』
まとめ

第十四章 折口信夫「髯籠の話」をめぐる諸問題
はじめに
一 折口信夫の生涯
二 「三郷巷談」の投稿
三 「髯籠の話」の発想
四 触媒となった南方熊楠の目籠エッセイ
五 プライオリティの問題
まとめ

結論
一 本書の構成と要約
二 先行研究の評価
三 民俗研究の萌芽期(近世期)の特徴
四 日本民俗学の生成期(明治時代)の特徴

参考文献一覧
あとがき
索引→公開中


著者
板橋 春夫(いたばし・はるお)

1954年群馬県生まれ。1976年國學院大学卒業。伊勢崎市職員、新潟県立歴史博物館参事、日本工業大学建築学部教授を歴任。現在、放送大学客員教授、成城大学大学院文学研究科非常勤講師。博士(文学・筑波大学)、博士(歴史民俗資料学・神奈川大学)。

単著:
『群馬の暮らし歳時記』(上毛新聞社、1988年)、『葬式と赤飯─民俗文化を読む─』(煥乎堂、1995年)、『平成くらし歳時記』(岩田書院、2004年)、『誕生と死の民俗学』(吉川弘文館、2007年)、『叢書・いのちの民俗学1 出産』(社会評論社、2008年)、『叢書・いのちの民俗学2 長寿』(社会評論社、2009年)、『叢書・いのちの民俗学3 生死』(社会評論社、2010年)、『群馬を知るための12章─民俗学からのアプローチ─』(みやま文庫、2012年)、『産屋の民俗』(岩田書院、2022年、日本民俗建築学会竹内芳太郎賞受賞)

共編著:
『日本人の一生─通過儀礼の民俗学─』(八千代出版、2014年)、『年中行事の民俗学』(八千代出版、2017年)

書評・紹介

ほんのうらがわ(編者による刊行エッセイ)