〈原作〉の記号学 日本文芸の映画的次元
定価:本体3,200円+税
すべての創作物は第二次テクストである
文学作品を原作とし、その変異としてあるはずの文芸映画が、にもかかわらず、かけがえのない固有性を帯びるのはなぜか。
『雪国』『羅生門』『浮雲』『夫婦善哉』『雨月物語』『山びこ学校』など戦後日本映画黄金期の名作から、『心中天網島』などの前衛作、『神の子どもたちはみな踊る』『薬指の標本』といった現代映画までを仔細に分析し、オリジナリティという観念に揺さぶりをかける。
目次
序説 文芸の様式と映画の特性──豊田四郎監督『雪国』
Ⅰ 〈原作現象〉の諸相
第一章 〈原作〉の記号学── 『羅生門』『浮雲』『夫婦善哉』など
第二章 《複数原作》と《遡及原作》── 溝口健二監督『雨月物語』
第三章 古典の近代化の問題── 溝口健二監督『近松物語』
第四章 〈原作〉には刺がある── 木下恵介監督『楢山節考』など
Ⅱ 展開される〈原作〉
第五章 意想外なものの権利── 今井正監督の文芸映画『山びこ学校』と『夜の鼓』
第六章 反転する〈リアリズム〉── 豊田四郎監督『或る女』
第七章 擬古典化と前衛性── 篠田正浩監督『心中天網島』
第八章 混血する表象── トニー・オウ監督『南京の基督』
展望 第二次テクスト理論の国際的射程── 映画『神の子どもたちはみな踊る』と『薬指の標本』
索引→公開中
著者
中村三春(なかむら・みはる)
1958年岩手県釜石市生まれ。東北大学大学院文学研究科博士後期課程中退。博士(文学)。
北海道大学大学院文学研究科教授。日本近代文学・比較文学・表象文化論専攻。
著書に『フィクションの機構』1・2、『新編 言葉の意志 有島武郎と芸術史的転回』、『修辞的モダニズム』、『〈変異する〉日本現代小説』(以上、ひつじ書房)、『係争中の主体 漱石・太宰・賢治』、『花のフラクタル』、『物語の論理学』(以上、翰林書房)、編著に『映画と文学 交響する想像力』(森話社)など。
※プロフィールは刊行時のものです