井上靖とシルクロード西域物の誕生と展開
定価:本体5,400円+税
史実のすきま 想像力のはばたき
人々にシルクロードのロマンを届けた井上靖。足を踏み入れたことのなかった西域を、作家はどう描いたのか。典拠と作品の比較から、史実と想像力がせめぎあう歴史小説の秘密に迫る。
宮澤賢治と松岡譲の西域物もあわせて論じる。
目次
序章 総論
一 敦煌ブームと日本近代文学
二 本書の構成
Ⅰ 井上靖の西域物の誕生
第一章 西域物の源泉──「漆胡樽」
一 詩から小説へ
二 井上靖が参照した「漢籍」
三 小説「漆胡樽」における虚構
四 「漆胡樽」から他の西域物へ
第二章 対の器物から生まれた作品──「玉碗記」
一 事実に支えられている作品
二 作品における対構造
第三章 西域で活躍した人物──「異域の人」の班超
一 初期の西域物
二 典拠との比較
三 班超の生きる意味
Ⅱ 井上靖の西域物の発展と変遷
第四章 「楼蘭」と『敦煌』
一 「楼蘭」におけるロブ湖
二 『敦煌』の創作と方法
三 『敦煌』における人物像
第五章 西域の水・河(川)を描く作品──「洪水」
一 井上靖と河(川)
二 「洪水」典拠の再検討
三 「洪水」における疑問点
四 西域経営と自然破壊
第六章 史実に即した作品──後期の西域物
一 「崑崙の玉」の典拠と方法
二 「崑崙の玉」──対の夢追い物語
三 「僧伽羅国縁起」と「羅刹女国」
Ⅲ 日本近代文学における西域物
第七章 宮澤賢治の西域物
一 宮澤賢治の西域物とは
二 宮澤賢治と島地大等
三 宮澤賢治と近代中央アジア探検
第八章 松岡譲の西域物
一 忘れられた作家
二 『敦煌物語』の成立と方法
三 大谷探検隊から大谷ミッションへ
終章 まとめと今後の課題
注
Ⅳ 付録
付録① 「異域の人」作品本文と典拠の比較
付録② 『敦煌』参考文献一覧
付録③ 井上靖西域関連著作一覧
付録④ 井上靖水・河(川)関連著作一覧
付録⑤ 「崑崙の玉」初出稿と改訂稿の比較
付録⑥ 宮澤賢治西域関連著作一覧
付録⑦ 松岡譲仏教関連著作一覧
付録⑧ 半藤末利子氏インタビュー──父・松岡譲の作家生涯について
付録⑨ 長岡市郷土史料館所蔵松岡譲資料一覧
付録⑩ 『敦煌物語』典拠資料一覧
初出一覧
あとがき
索引→公開中
著者
劉 東波(リュウ・トウハ)
1989年、中国甘粛省生まれ。2019年に新潟大学博士後期課程修了、博士号(文学)取得。国際日本文化研究センター共同研究員、日本学術振興会特別研究員(PD)、新潟大学博士研究員を経て、現在は南京大学外国語学院の助理研究員。