「くだらない」文化を考える
ネットカルチャーの社会学
定価:本体2,300円+税
インターネットと草の根文化
炎上、祭り、ネットスラング、アスキーアート、オフ会、MMD、MAD……。
「2ちゃんねる圏」を舞台にネットユーザーが生み出した「くだらない」「取るに足らない」文化は、それゆえに論じられないままでよいのか。
SNS全盛の現代、オワコンといわれる「2ちゃんねる圏」の文化に、社会学の知見を用いて大まじめに切り込む、ネットカルチャー論。
目次
序論
第一章 ネットカルチャー研究の発展に向けて──ポピュラー文化と参加文化の視点から
はじめに/一 日本社会を文脈とするネットカルチャーの歴史/二 電子掲示板2ちゃんねるに関する研究/三 ネットカルチャー研究の停滞/四 ネットカルチャー研究の発展を図るための視点/おわりに
第二章 インターネット上のニュースとアマチュアによる草の根的な活動
はじめに/一 インターネット上のニュースをめぐる草の根的な活動の歴史/二 アマチュアによる草の根的な活動を研究することの困難/三 ポピュラー文化とニュース/四 アマチュアによる草の根的な活動と社会問題の接点/おわりに
第三章 インターネットを通じて可視化されるテレビ・オーディエンスの活動──公共性への回路
はじめに/一 オーディエンスと不可視のフィクション/二 インターネットを通じて可視化されるオーディエンス/三 2ちゃんねるの圏域に見られるテレビ・オーディエンス/四 インターネットを通じたテレビ・オーディエンスの活動に見る既視感/五 インターネット上のテレビ・オーディエンスの活動に見る公共性/おわりに
第四章 インターネット上のアマチュア動画に見られる「カルト動画」
はじめに/一 インターネットにおけるアマチュア動画の歴史/二 インターネット上のアマチュア動画に関する研究の展開と枠組みの検討/三 言及がはばかられるインターネット上のアマチュア動画/四 カルトとしてのアマチュア動画/おわりに
第五章 オンライン・コミュニティの多様化と文化現象──「下位文化理論」を手がかりとして
はじめに/一 コンピュータ・ネットワークを介した人々の集まりと「コミュニティ」/二 オンライン・コミュニティ論の停滞/三 多様なオンライン・コミュニティの共存と成員間の相互作用/四 オンライン・コミュニティの多様化とインターネット空間の「都市化」/五 オンライン・コミュニティ成員間の相互作用と文化/おわりに
第六章 インターネットにおける炎上の発生と文化的な衝突
はじめに/一 インターネットにおける炎上の歴史/二 フレーミングと炎上の違い/三 炎上が起こる理由/四 下位文化理論から見る炎上/おわりに
第七章 ネットスラングの広がりと意味の変容──「リア充」を事例として
はじめに/一 コンピュータ・ネットワークを介した人々のやりとりとスラング/二 日本社会を文脈とするネットスラング/三 インターネット空間におけるコンテンツの拡散/四 「リア充」というネットスラングの広がり/五 ネットスラングの広がりとサブカルチャー/おわりに
第八章 ネットユーザーによるコンテンツへの関与をめぐる批判的考察──2ちゃんねるのまとめサイト騒動を事例として
はじめに/一 ソーシャルメディアの普及とネットユーザーによるコンテンツへの関与/二 ソーシャルメディアのプラットフォームが生み出す利益や報酬/三 金銭的報酬の獲得を企図したコンテンツ流用とネットユーザーの反発/四 「名づけ」としての「ステマ」や「アフィ」/おわりに
第九章 インターネット空間における「ネタ」の意味──「遊び」の研究を手がかりとして
はじめに/一2ちゃんねるにおけるやりとりと「ネタ」/二 ソーシャルメディアの普及に伴う「ネタ」の変容/三 「ネタ」と「遊び」/四 「ネタ」の位置づけとその変容/五 インターネット空間における「ネタ」の意味/おわりに
終章 ネットカルチャー研究の課題
参考文献
初出一覧
あとがき
索引→公開中
著者
平井智尚(ひらい・ともひさ)
1980年 新潟県生まれ
2003年 日本大学法学部新聞学科卒業
2009年 慶應義塾大学大学院社会学研究科社会学専攻後期博士課程単位取得退学
現在 日本大学法学部新聞学科専任講師
主著
『ニュース空間の社会学──不安と危機をめぐる現代メディア論』(共著、世界思想社、2015年)、『戦後日本のメディアと原子力問題』(共著、ミネルヴァ書房、2017年)、ニック・クドリー『メディア・社会・世界──デジタルメディアと社会理論』(共訳、慶應義塾大学出版会、2018年)